えびの市の田の神2
 
 えびの市の田の神は農民型の田の神が多いのが特徴で、個性豊かなユニークな田の神像が多くある。制作年代も江戸後期より明治・大正・昭和とバラエティーに富んでいる。

 その中でも多いのが膝を前に出してかがみ込みメシゲと椀をもつ像である。大河平の江戸時代と明治時代の製作と思われる2体の田の神やよく知られた末永の田の神などがそれである。最も最近の作と思われるむえびの市文化センターにある田の神も同じ姿である。



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歴史民俗資料館の田の神    えびの市大明司    

 

 えびの市の歴史民俗資料館には4体の田の神が展示されている。

 その内の一体が中原田の山形家に伝わる田の神で、すばらしい彫りの田の神で、農民型田の神の傑作である。シキをかぶり右手に大きなメシゲをかかげるように持ち、左手にはメシを盛った椀を
持って、力強く一歩踏み出して、田の神舞を踊っている様子を表している。めくりあがった袖口や肌けた襟元など写実的な着衣の表現がこの像をより動きのあるものにしている。

 「奉寄進文政十三庚寅閏 三月吉祥日 山形直左衛門」の記銘があり、文政13(1830)年3月に山形直左衛門によって造立されたことがわかる。それ以降、山形家で大切にされ、風雨にさらされることなく今日に至っている。

 えびの市には中原田の田の神のように、個人持ちや屋内で祀られている田の神像が多くある。資料館に展示されている残りの3体の田の神もそのような像である。京町の今田家の田の神は像高28.5pで、右手にメシゲ、左手にキネを持つ。昭和21年に製作され、10戸ぐらいので回り田の神として祀られていたものである。製作者は京町の石工、春田浅吉といわれている。

 下島内、内田家の田の神も昭和21年に製作されたもので、回り田の神として屋内で祀られていた。像高27pでシキをかぶり、メシゲとキネを持つ。これも、京町の石工、春田浅吉の作と思われる。

 京町、荒神堂の田の神は像高35pで、個人持ちか回り田の神であったと思われるが、いつ誰が持ち込んだのか、京町の荒神堂の大タブ樹の根元に置かれていたものである。

 資料館と文化センターの間の庭の正面にすえられている田の神は昭和62年、京町の石工、春田淺二によって製作されたもので、田の神像の後ろに「贈 昭和62年中秋吉日 石工 春田淺二 七二才 作 」と彫られている。春田淺二は湯田の萩原家や福元家の田の神像を昭和30年代に製作している。


アクセス
・九州自動車道えびのICより国道268号線を東へ約2.3q。文化センター前を左折し0.2q。
・JR吉都線「えびの」駅下車。北東へ2.2q。または、「えびの」駅下車、「加久藤」より小林バスセンター行きバス乗車「文化センター」下車。

 

 

 

大明司の田の神    えびの市大明司    像高67cm

 えびの市では現在でも田の神講が盛んで豊作を祈り田の神祭りがおこなわれる。戦後になって制作された田の神も多い。そのような田の神の一つが大明司の田の神である。

 大明司の田の神はえびの市大明司の国道268号線沿いのコンクリートの祠に祀られている。昭和41年に制作されたもので、2俵の米俵の上にあぐらをかくユニークな姿である。あごひもがついたシキ様の笠をかぶっている。メシゲ・椀・米俵・あごひもは薄茶色、顔と手は白、衣裳と口は赤色に着色する。衣裳の衣紋は見られず、赤い競輪服着てヘルメットをかぶった競輪選手のように見える。像高67p。

 


アクセス
・九州自動車道えびのICより国道268号線を東へ約4q。
・JR吉都線「えびの」駅下車。バス停「加久藤」より小林バスセンター行きバス乗車「大明司」下車。




佐院の田の神    えびの市原田麓佐院     

 えびの市原田麓の東の端、川内川に流れ込む支流の小さな川にかかる橋のたもとに鉄骨造りの立派な祠がつくられ2体の田の神が祀られている。

 向かって左の田の神は米俵の上に座り、メシゲと椀を持つ田の神である。大きなシキをかぶっている。服装は僧衣のように見える。えびの市教育委員会発行の「田の神さぁ」の写真では着物は青、メシゲと椀は茶色、シキと俵は黄色に彩色されていたが、平成18年の夏に訪れたときは、着物は赤と黄、青、メシゲと俵は薄茶色、シキはオレンジ色に塗られていた。大正15年(1926)の建立。像高68p。

 右の田の神は、えびの市でよく見かける、膝を前に出してかがみ込みメシゲと椀をもつ像である。背中に2俵の俵を背負う。像高49pで素朴な味わいのある田の神である。江戸末期の作風で、木野家の氏神として祀られていたが、平成9年に寄贈され佐院の田の神の横に並べられた。

アクセス
・九州自動車道えびのICより国道268号線を東へ約6.6km。「飯野中学校入口」 左折、道に沿って北東へ約1q。
・JR吉都線「飯野」駅下車。北へ約3q。またはJR吉都線「小林」駅下車。「小林バスセンター」または「本町」より「京町待合所」行きバス乗車「大平」下車。北東へ約1q。



 

大河平の田の神    えびの市大河平 小牧・川上

 えびの市大河平(おおこうびら)の小牧と川上にシキをアミダにかぶりメシゲを顔の横にかかげるように持ち、膝を前に出してかがみ込んだ田の神がある。

 大河平小牧の田の神は民家の庭に小さな祠に祀られている。像高49p、メシゲと帯、口は赤、顔と手は白に塗られている。長袖の和服で袴をはく。着物には紺色の彩色の跡が残っている。左手は何も持たないが、破損していたものを最近修復したもので、もとは椀を持っていたと思われる。江戸末期の作風。

 大河平小牧の田の神は立派な祠に祀られていて、現在も田の神講か開かれている。訪れたときも造花や生け花か供えられていた。像高57pで、右手でメシゲ、左手で椀を顔の横にかかげるように持つている。シキと着物と椀は赤、顔・手・メシゲは白に着色され、丁寧に目鼻、口がかかれいる。明治時代の製作。

 

アクセス
・九州自動車道えびのICより国道268号線を東へ約8.1km。「えびの市五日市」を左折、県道404号線を北へ約0.8qで小牧の田の神。「えびの市五日市」から県道404号線を道なりに北東へ2.1qで川上の田の神。

・JR吉都線「飯野」駅下車。北東へ約3.1qで小牧の田の神。「飯野」駅より北東へ4.5qで川上の田の神。またはJR吉都線「小林」駅下車。「小林バスセンター」または「本町」より「京町待合所」行きバス乗車「五日市」下車。北北東へ約0.8qで小牧の田の神。北東へ2.1qで川上の田の神。

 

 

 

東原田八幡の田の神    えびの市原田八幡

         江戸時代?  高54p(左) 高46p(右)
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 えびの市飯野の五日市の南東に八幡岳と言う小さな山があり、寺と公園になっている。その麓の小さな集落が八幡である。八幡の西の田園地帯の中に小さな墓地があり、その墓地の前に、このかわいらしい2体の農民型の田の神像がある。

 右の像、高さ54pで、幅55pほどの2俵の大きな俵を背負っていて、俵2俵の高さは、背の高さとほぼ同じである。顔と胸、手は白く塗られていて、右手に赤いメシゲを左手に白に塗られた椀(握り飯に見える)を持つ。

 左の像は高さ46pほどで、頭にシキをかぶり、右手に赤いメシゲを、左手に大きな赤い椀を持つ。白塗りの顔は、目と眉毛は黒く、口は赤く塗っていて、垂れ目の目と、赤い頬と口がかわいらしい。


アクセス
・九州自動車道えびのICより国道221号線を東へ約8q。下五日市より南へ約300m。
・JR吉都線「えびの飯野」駅下車。北東へ約2.5km。


 

 

東原田大平落の田の神  えびの市原田大平落

    江戸時代?  高47p  
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 国道221号線の五日市より1qほど南の大平落の県道沿いの小さな墓地の片隅のコンクリートのお堂にこの田の神が祀られている。すねから下を出してかがみこんだ姿の農民型の田の神である。

 右手にメシゲを持ち左手に椀を持つ、衣服は青と茶色に彩色され、白塗りの顔には目鼻口が稚拙であるがかわいらしく描かれている。足は白く塗られていて、小さな大根のように見える。シキは頭に被らず光背のようになっている。

アクセス

・九州自動車道えびのICより国道221号線を東へ約8q。下五日市より南へ約800m。
・JR吉都線「えびの飯野」駅下車。北東へ約1.5km。

 



上江の田の神  えびの市上江田上

 R吉都線「えびの飯野」駅の北西のえびの市上江(うわえ)の民家のそばに鉄筋とコンクリートで作った祠に田に祀られている。像高55pの農民型の田の神であるが、風化して彫りはあまり残っていない。現在、顔は白く、目・鼻・口・神は黒に彩色されている。シキと体は茶色がかった紫色で模様がつけられている。化粧した人のセンスの光る田の神である。

 訪れたときは1月の正月明けの時で、しめ縄が飾られ、花香が供えられていた。


アクセス

九州自動車道えびのICより国道221号線を東へ約6q。 「亀城 」を右折し県道411号線を南へ7q。右折し道なりに南西へ300m
JR吉都線「えびの飯野」駅下車。北西へ約1.4km。




末永の田の神    えびの市末永

         明治21年  高さ48p・幅36p
 
 えびの市役所のあるえびの市加久藤より、白鳥温泉へ向かう途中にある末永地区にこの田の神がある。この田の神をモデルにした田の神の絵がえびの市のホームページや高速道路でえびの市を表す標識として使われていて、えびのでは最も知られている田の神である。

 東原田大平落の田の神と同じようにシキを被らず光背のように表現している。右手にメシゲを持ち左手に椀を持つ、シキと衣服は赤と白に見事に彩色されいる。顔は白く彩色され、稚拙であるが可愛いい目鼻とおちょぼ口が印象的である。

 現在、立派な社に祀られているが、毎年、5月4日には社から担ぎ出され、きれいな化粧を施されて、豊作を祈願する田の神祭りが盛大におこなわれる。


アクセス
・九州自動車道えびのICより国道221号線を700m、「市役所入口」交差点を県道30号線を約3.5q。末永の集落の北。
・JR吉都線「えびの」駅下車。南東へ約2.8km。

 

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ballb03.gif (1352 バイト)キ城市の田の神1 ballb03.gif (1352 バイト)高原町の田の神 ballb03.gif (1352 バイト)小林市の田の神
ballb03.gif (1352 バイト)キ城市の田の神2 ballb03.gif (1352 バイト)野尻町の田の神 ballb03.gif (1352 バイト)えびの市の田の神1
ballb03.gif (1352 バイト)三股町の田の神  ballb03.gif (1352 バイト)宮崎市の田の神 


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