えびの市の田の神1
 
 えびの市は宮崎県の西端に位置し、鹿児島県と熊本県に接する山間の町である。えびの高原や京町温泉などで知られる観光地の町でもある。このえびの市には100基を越える田の神石像があり、「田の神サアの里」としても知られ、「田の神さあ、おどり大会」「田の神さあの里、産業文化祭」など田の神サアと銘打ったイベントも実施されている。

 特に、えびの高原に向かう末永地区の赤と白の化粧をした田の神の絵は、えびの市の象徴として、えびの市のホームページや高速道路でえびの市を表す標識として使われている。
 
 えびの市の田の神は北諸や西諸地区に比べると、農民型が多いのが特徴で、「末永地区の田の神」をはじめや「東原田八幡の田の神」や「下浦の田の神」など個性豊かなユニークな田の神像が多くある。


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吉田温泉の田の神      えびの市昌明寺    像高58cm

 吉田温泉は京町温泉の北、えびの高原を一望する静かな丘陵地に湧くひなびた温泉である。その温泉の北の棚田の前、木造の祠にこの田の神が祀られている。

 顔面と体はは肌色に塗られ、ハの字の眉と丸い目と小さな鼻、赤いおちょぼ口と頬紅が描かれた顔とヘソを出したユーモラスな姿は、いたずら盛りの子どものようで、可愛らしく、えびの市の田の神の中でもよく知られた田の神である。

 両手が欠損しているため、持ち物はわからないが、メシゲなどを持つていたと思われ、シキをかぶった農民型の像で、大正時代に「おっとって(盗んで)」持ってきた田の神である。


アクセス
・九州自動車道えびのICより国道268号線を西へ約2.4�q。右折し、上真幸橋を渡り600m。左折し約1.5kmで吉田温泉。右折し250m。
・
JR吉都線「京町温泉」駅下車。北へ3.2�q。




南昌明寺の田の神    えびの市南昌明寺   江戸時代?  高76�p

 南昌明寺の日枝神社に木造銅板葺の立派な祠があり。その中にこの田の神は祀られている。狩衣を着た神官型の田の神である。

 顔面は白く塗られ、福笑いの顔のような丸い目と太い眉毛が描かれている。頬はピンクに、衣類は赤・青・黄・白に塗られている。頭部も白く塗られているため坊主頭にみえる。

アクセス

・九州自動車道えびのICより国道268号線を西へ約2.4�q。右折し、上真幸橋を渡り600m。左折し約1.2km、吉田温泉手前を左折すぐ。
・JR吉都線「京町温泉」駅下車。北へ約2.7�q。

 

 

南松岡の田の神     えびの市南松岡     高41�p  63�p

 京町温泉の街の西、川内川に架かる岡松橋の西詰にコンクリートの台座の上に祀られている。元は岡松神社の境内にあったもので、「おっとい田の神」にあって帰ってきた田の神であるという。

 シキを被り、右手にメシゲ、左手にキネを持った典型的な農民型の田の神である。背中は俵やワラヅトではなく背石になっている。顔面や衣類に彩色の跡が残るが、現在は色は塗られていない。年老いた農婦のような味のある顔が印象に残る。

   南松岡の集落の東端の共同墓地の前の民家の入口に、色鮮やかな青色に塗られた着衣を着た田の神がある。吉田温泉の田の神と同じく腰をかがめて田の神舞を踊る姿を表したものである。吉田温泉の田の神と同じく両手は破損していて持ち物はわからないが右手にはメシゲを持っていたと思われる。ドングリ眼のとぼけた顔が印象的である。(昭和30年造立)


アクセス

・九州自動車道えびのICより268号線を西へ約4.9�q。京町温泉の街の西を右折、岡松橋を渡りすぐで南松岡の田の神1、そこから西へ約800mで南松岡の田の神2。
・
JR吉都線「京町温泉」駅下車。西へ約1�qで南松岡の田の神1。そこから西へ約800mで南松岡の田の神2。



中内竪梅木の田の神    えびの市中内竪梅木

享保十(1725)年  高78�p
 この田の神は、えびの市の京町温泉の北西、中内竪の水田の中を通る国道447号線の道端に祀られている。「享保十年(1725)」の刻銘があり、小林市の新田場の田の神とともに、宮崎県を代表する神官型の田の神でる。円形の台に腰掛けた束帯姿の田の神で、石の美しさや力強さを生かした重厚な彫りの像である。着衣の線は単純であるが厚みとふくらみがある。

 周りは水田で田の神の写真をとるには最適の場所にあるが、冬の小雨の中での撮影のため、顔の表情をうまく撮れなかったのが残念である。 


アクセス

・九州自動車道えびのICより国道221号線を西へ約5�q。「京町」交差点で右折し、国道447号線を約1.5km。
・ JR吉都線「京町温泉」駅下車。北西へ約1.5km。



 

京町向江の田の神        えびの市京町向江

    江戸時代?  高78�p  
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 京町温泉駅より線路に沿って300mほど東にいった町のはずれに、この神官型の田の神がある。摩滅が激しく、顔はほとんど彫りが残っていないが、白く塗られて、大きな目が描かれている。そのためか、親しみがもてる田の神である。

 えびの市の田の神は農民型が多いが、神官型の田の神もある。特に、えびの市最古の加久藤八日町〔享保九(1724)年の記銘〕と真幸中内竪〔享保十(1725)年の記銘〕の田の神は神官型の田の神として知られている。中でも、真幸中内竪の田の神像は、小林市の新田場の田の神とともに宮崎を代表する田の神である。

アクセス

・宮崎道えびのICより国道268号線を4�q。京町の共立病院前の交差点を左折すく゜。
・JR吉都線「京町温泉」駅下車。東へ
300m。

 


下浦・中浦の田の神    えびの市真幸下浦・中浦

    江戸時代?  高51�p    昭和2(1927)年 高62�p
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 京町温泉駅の南の集落、下浦の入口近くの道の横の竹藪の前に下浦の田の神が祀られている。襷がけで、左足を一歩踏み込み、メシゲを両手でしっかり持つ農民型の田の神像である。大きな額と、団子鼻が印象的である。着物は赤と緑に、頭にかぶるシキは赤に鮮やかに彩色されていて、目鼻は黒で描かれている。

 「宮崎の田の神像」(鉱脈叢書)で亡くなった上方落語の桂枝雀を思わせる好々爺といった顔のこの田の神の写真を見て、是非とも見たいと訪れたのであるが、白塗りし目鼻を描いているため、表情はきつくなっていて、印象は少し違った。

 中浦の田の神は県道53号線沿いの瓦葺きの立派な祠に祀られている。柄の長いメシゲを右手でかかげ、左手に杵を持ち、青色の袴・黄色のシキ・白色の顔面で頬紅・口紅と鮮やかに化粧された田の神である。ブリキのおもちゃのような趣で親しみの持てる像である。製作者は京町の石工、春田浅吉である。


アクセス

・宮崎道えびのICより国道268号線を4.5�q。京町温泉駅前の交差点より線路を越えて南へ1.5�qで下浦の田の神。京町温泉駅前の交差点より線路を越えて南東へ1.3�qで中浦の田の神。
・JR吉都線「京町温泉」駅下車。南へ1�qで下浦の田の神。南東へ1.3�qで中浦の田の神
。


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上浦岡元の田の神  えびの市南昌明寺 文政二(1819)年  高40�p

 「京町温泉」駅の南東4.5�q、岡元小学校の東に小さなコンクリートの祠にこの小さな神官型の田の神が祀られている。

 冠をかぶり狩衣を着ていて、両手を輪組にして笏を持たせるようにしている。現在は笏のかわりにメシゲを持っている。顔と手は白色に衣類は黒で着色されている。宮崎県の神官型の田の神でよく知られたものは台に腰掛けた田の神であるが、この像は鹿児島県の神官型の田の神と同じように安坐する。宮崎県でも江戸時代後期から昭和にかけての神官型の田の神は安坐するものが多い。

アクセス

・宮崎道えびのICより国道268号線を4.5�q。京町温泉駅前の交差点より線路を越えて南東へ4.5�q。
・JR吉都線「京町温泉」駅下車。南東へ4.5�q。

 



上島内の田の神   えびの市島内上島内 明治20年(1887)  高67�p

 
「京町温泉」駅の東南東へ2.5�q。「上島内地域研修センター」付近に立派な木造銅板葺の祠に祀られている。

 シキをかぶり右手にメシゲ、左手に杵のようなものを持つ農民型の田の神である。もんぺ姿で、顔面、手、足は白く、衣類とシキ・メシゲは赤く着色している。写真を撮ったときは彩色して間もないときなのためか鮮やかな色をしていた。

 横に石碑があり、表に「明治二十年丁亥 田の神 十二吉日 田之神講中」と刻まれている。裏にこの碑をたてた人と立てた年月日(昭和60年)が刻まれている。
 


アクセス

・宮崎道えびのICより国道268号線を東へ0.7�q、「えびの市役所入口」 右折南へ1.6�q、「えびの市栗下」を左折県道53号線を西へ2.6�q。「上島内地域研修センター」方面へ左折し0.2�q。
・JR吉都線「京町温泉」駅下車。東南東へ2.5�q。

 




 松原の田の神    えびの市松原      高33�p

 えびの市松原の国道268号線沿いの小さな木造の祠に祀られている。自然石の田の神で、バイバス通過時に、三分の二埋められ、現在は上部に白い顔が描いている。顔の周りを茶色に塗り、黒の点線で縁取りをしている。目・鼻は黒、口は赤で、描いた人のセンスが光る田の神像である。

 自然石を田の神として祀る例はえびの市ではよくみられ、田の神の約2割が自然石である。自然石を田の神として祀るのは田の神像が生まれる以前からあったと思われ、田の神信仰の偶像化・シンボル化の第一歩であったのではないだろうか。 
 


アクセス

・宮崎道えびのICより国道268号線を東へ1.6�q。
・JR吉都線「えびの」駅下車。北北東へ
1.4�q。

 



 

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