えびの市の田の神1
 えびの市は宮崎県の西端に位置し、鹿児島県と熊本県に接する山間の町である。えびの高原や京町温泉などで知られる観光地の町でもある。このえびの市には100基を越える田の神石像があり、「田の神サアの里」としても知られ、「田の神さあ、おどり大会」「田の神さあの里、産業文化祭」など田の神サアと銘打ったイベントも実施されている。

 特に、えびの高原に向かう末永地区の赤と白の化粧をした田の神の絵は、えびの市の象徴として、えびの市のホームページや高速道路でえびの市を表す標識として使われている。

 えびの市の田の神は都城市や小林市、高原町などに比べると、農民型が多いのが特徴で、加久藤エリアの「末永地区の田の神」をはじめや飯野エリアの「東原田八幡の田の神」、真幸(まさき)エリアの「吉田温泉の田の神」・「下浦の田の神」など個性豊かなユニークな田の神像が多くある。神官型田の神では小林市の「新田場の田の神」や都城市高崎町の「谷川の田の神」とともに、宮崎県代表する「中内竪梅木の田の神」がある。この「えびの市の田の神1」のページは「吉田温泉の田の神」・「下浦の田の神」・「中内竪梅木の田の神」のあるえびの市の真幸(まさき)エリア(旧真幸町)の田の神を紹介する。
宮崎の田の神 Index
都城の田の神1 都城の田の神2 三股町の田の神 高原町の田の神
小林市の田の神1 小林市の田の神2 小林市の田の神3 えびのの田の神1
えびのの田の神2 宮崎市の田の神1 宮崎市の田の神2  



       
宮崎の田の神 (74) 吉田温泉の田の神
宮崎県えびの市昌明寺 「年代不明」
 吉田温泉は京町温泉の北、えびの高原を一望する静かな丘陵地に湧くひなびた温泉である。その温泉の北の棚田の前、木造の祠にこの田の神が祀られている。  顔面と体はは肌色に塗られ、ハの字の眉と丸い目と小さな鼻、赤いおちょぼ口と頬紅が描かれた顔とヘソを出したユーモラスな姿は、いたずら盛りの子どものようで、可愛らしく、えびの市の田の神の中でもよく知られた田の神である。

 両手が欠損しているため、持ち物はわからないが、メシゲなどを持つていたと思われ、シキをかぶった農民型の像で、大正時代におっとって(盗んで)持ってきた田の神である。
 
               
アクセス
・JR吉都線「京町温泉」駅下車、北へ3.3q。タクシー乗り場なし、駅前の観光交流センターで手配もしくは北へ350m「京町待合所」バス停にタクシー営業所。
自動車・宮崎道「えびの」ICより西北西へ約5.2q。



       
宮崎の田の神 (75) 中内竪梅木の田の神
宮崎県えびの市中内竪梅木  「享保10年(1725)」
 私が最初に撮影した田の神像は「中内竪(なかうちだて)梅木の田の神」でした。この時あまり田の神像に興味はなかったのだが、山に囲まれた田園の中にどっしりと座った重厚感のある田の神像のある風景に魅力を感じて撮影した。その意味では私の田の神像遍歴の最初といえる田の神像である。

 内竪梅木の田の神はえびの市の京町温泉の北西、中内竪の水田の中を通る国道447号線の道端に祀られている。「享保十年(1725)」の刻銘があり、小林市の「新田場の田の神」・都城市高崎町の「谷川の田の神」とともに、宮崎県を代表する神官(神像)型の田の神である。円形の台に腰掛けた束帯姿の田の神で、着衣の線は単純であるが厚みとふくらみがあり、引き締まった顔で、石の美しさや力強さを生かした重厚な彫りの像である。「西田の田の神」など薩摩の田の神像に興味を持ったあとも、この像は何回も撮影した。
 
               
アクセス
・JR吉都線「京町温泉」駅下車、北北西へ1.7q。タクシー乗り場なし、駅前の観光交流センターで手配もしくは北へ350mの「京町待合所」バス停にタクシー営業所。
自動車・宮崎道「えびの」ICより西へ約5.7q。



       
宮崎の田の神 (76)  南昌明寺の田の神
宮崎県えびの市昌明寺
 南昌明寺の日枝神社の鳥居の隣に木造銅板葺の立派な祠があり。その中にこの田の神は祀られている。狩衣を着た神官型の田の神である。顔面は白く塗られ、福笑いの顔のような丸い目と太い眉毛が描かれている。頬はピンクに、衣類は赤・青・黄・白に塗られている。頭部も白く塗られているため坊主頭にみえる。
 
               
アクセス
・JR吉都線「京町温泉」駅下車、北へ2.2q。タクシー乗り場なし、駅前の観光交流センターで手配もしくは北へ350mの「京町待合所」バス停にタクシー営業所。
自動車・宮崎道「えびの」ICより西北西へ約5.2q。



       
宮崎の田の神 (77) 南岡松の田の神
宮崎県えびの市岡松
南岡松の田の神1 「年代不明」
  京町温泉の街の西、川内川に架かる岡松橋の西詰にコンクリートの台座の上に祀られている。元は岡松神社の境内にあったもので、「おっとい田の神」にあって帰ってきた田の神であるという。

 シキを被り、右手にメシゲ、左手にキネを持った典型的な農民型の田の神である。背中は俵やワラヅトではなく背石になっている。顔面や衣類に彩色の跡が残るが、現在は色は塗られていない。年老いた農婦のような味のある顔が印象に残る。現在は、この田の神の周辺や南岡松の集落までの道の脇には新しく作られた田の神が並べられ「田の神通り」となっている。
 
南岡松の田の神2 「昭和30年(1955)」
南松岡の集落の東端の共同墓地の前の民家の入口に、色鮮やかな青色に塗られた着衣を着た田の神がある。吉田温泉の田の神と同じくシキを被り腰をかがめて田の神舞を踊る姿を表したものである。吉田温泉の田の神と同じく両手は破損していて持ち物はわからないが右手にはメシゲ、左手にキネを持っていたとのこと。ドングリ眼のとぼけた顔が印象的である。台座に「昭和三十年八月二十八日」造立年と発起者・賛同者の刻銘がある。
 
               
アクセス
・JR吉都線「京町温泉」駅下車、西へ950mで南岡松の田の神1。南岡松の田の神1から西へ850mで南岡松の田の神2。
自動車・宮崎道「えびの」ICより西へ約6.3qで南岡松の田の神1。南岡松の田の神1から西へ850mで南岡松の田の神2。



       
宮崎の田の神 (78) 京町向江の田の神
宮崎県えびの市向江
 京町温泉駅より線路に沿って300mほど東にいった町のはずれに、この神官型の田の神がある。摩滅が激しく、顔はほとんど彫りが残っていないが、白く塗られて、大きな目が描かれている。そのためか、親しみがもてる田の神である。
 
               
アクセス
・JR吉都線「京町温泉」駅下車、線路沿いに東北東へ450m。
自動車・宮崎道「えびの」ICより西へ約4.2q。



       
宮崎の田の神 (79) 下浦の田の神
宮崎県えびの市浦1211  「年代不明」
  京町温泉駅の南の集落、下浦の入口近くの道の横の竹藪の前に下浦の田の神が祀られている。襷がけで、左足を一歩踏み込み、メシゲを両手でしっかり持つ農民型の田の神像である。大きな額と、団子鼻が印象的である。着物は赤と緑に、頭にかぶるシキは赤に鮮やかに彩色されていて、目鼻は黒で描かれている。

 「宮崎の田の神像」(鉱脈叢書)で亡くなった上方落語の桂枝雀を思わせる好々爺といった顔のこの田の神の写真を見て、是非とも見たいと訪れたのであるが、白塗りし目鼻を描いているため、表情はきつくなっていて、印象は少し違った。
 
               
アクセス
・JR吉都線「京町温泉」駅下車、南東へ500m。
自動車・宮崎道「えびの」ICより西南西へ約5.3q。



       
宮崎の田の神 (80) 中浦の田の神
宮崎県えびの市島内2022-2 「昭和初期〜中期」
 中浦の田の神は県道53号線沿いの瓦葺きの立派な祠に祀られている。柄の長いメシゲを右手でかかげ、左手に杵を持ち、青色の袴・黄色のシキ・白色の顔面で頬紅・口紅と鮮やかに化粧された田の神である。ブリキのおもちゃのような趣で親しみの持てる像である。製作者は昭和初期・中期に活躍した京町の石工、春田浅吉である。春田浅吉である。えびの市歴史民俗資料館に展示されている「今田家の田の神」も春田浅吉の作である。
 
               
アクセス
・JR吉都線「京町温泉」駅下車、南東へ1.2q。
自動車・宮崎道「えびの」ICより西南西へ約3.9q。



       
宮崎の田の神 (81) 上浦の田の神
宮崎県えびの市浦368-28 「年代不明」
 「京町温泉」駅の南東4.5q、岡元小学校の東に小さなコンクリートの祠にこの小さな神官型の田の神が祀られている。

 冠をかぶり狩衣を着ていて、両手を輪組にして笏を持たせるようにしている。現在は笏のかわりにメシゲを持っている。顔と手は白色に衣類は黒で着色されている。宮崎県の神官型の田の神でよく知られたものは台に腰掛けた田の神であるが、この像は鹿児島県の神官型の田の神と同じように安坐する。宮崎県でも江戸時代後期から昭和にかけての神官型の田の神は安坐するものが多い。上浦には他にメシゲを持って踊る農民型の田の神があるが、撮影できなかった。
 
               
アクセス
・JR吉都線「京町温泉」駅下車、南へ3.2q。タクシー乗り場なし、駅前の観光交流センターで手配もしくは北へ350mの「京町待合所」バス停にタクシー営業所。
自動車・宮崎道「えびの」ICより南南西へ約6.4q。



       
宮崎の田の神 (82) 上島内の田の神
宮崎県えびの市島内 「明治20年(1887)」
 「京町温泉」駅の東南東へ2.4q。「上島内自治公民館」の南200mに立派な木造銅板葺の祠に祀られている。

 シキをかぶり右手にメシゲ、左手に杵のようなものを持つ農民型の田の神である。もんぺ姿で、顔面、手、足は白く、衣類とシキ・メシゲは赤く着色している。写真を撮ったときは彩色して間もないときなのためか鮮やかな色をしていた。

 横に石碑があり、表に「明治二十年丁亥 田の神 十二吉日 田之神講中」と刻まれている。裏にこの碑をたてた人と立てた年月日(昭和60年)が刻まれている。
 
               
アクセス
・JR吉都線「京町温泉」駅下車、東南東へ2.4q。タクシー乗り場なし、駅前の観光交流センターで手配もしくは北へ350mの「京町待合所」バス停にタクシー営業所。
自動車・宮崎道「えびの」ICより西へ約3.2q。



小林市の田の神3  えびの市の田の神2