奈良市の石仏2
|
奈良町にある十輪院は、石龕内に安置された鎌倉時代の地蔵石仏を本尊とする寺院で、本尊以外にも多くの古い石仏や石造物があり、奈良の石仏鑑賞では見逃せない寺院である。 東大寺周辺や若草山周辺にも仏頭石や三国台三体仏、空海寺地蔵十王石仏、五劫院見返り地蔵などバラエティーに富んだ石仏がある。 般若寺はコスモスをはじめとしてヤマブキ・アジサイなど花の寺として知られている。この寺には鎌倉時代、宋より渡来し活躍した石工の伊派の祖、伊行末の作の十三重石塔がある。江戸時代の西国三十三所観音石仏もあり、夏から秋にかけて美しく咲いたコスモスに映えた石塔や石仏の姿は美しい。 |
|
|||||
奈良町にある十輪院は元正天皇の勅願寺で、元興寺の別院といわれ、右大臣吉備真備の長男・朝野宿禰魚養(あさのすくね なかい)の開基と伝えられる古寺である。創建当時の建物はなく本堂(国宝)や石龕内に安置された本尊の地蔵石仏など鎌倉時代の文化財が多く残り、中世以降は地蔵信仰の場として知られた寺院である。 本尊の地蔵石仏は錫杖を持たをず右手を下に垂らし与願印を示し、胸の前で左手で宝珠を持つ、像高1.5mの古式地蔵である。おおらかで優雅な顔の表情で、豊かな厚肉彫りの重厚な作風は、地蔵石仏の再興傑作である。 地蔵石仏は様々な切石で構築された石室風の石龕の奥正面に納められていて、一括して石仏龕として国の重要文化財に指定されている。石室風の石龕の左右両壁に十王像を線彫りし、前面の左右の扉石に釈迦と弥勒の立像を半肉彫りする。その他、不動・観音の立像や仁王・四天王などが刻まれている。彩色の跡が残り、やさしく、軟らかな表現の釈迦・弥勒像など、美しい石仏龕である。 南門を入った右に庭園があり。その中に鎌倉時代の不動・観音をはじめとして十三重石塔・愛染曼荼羅石・興福寺曼荼羅石が配置されている。本堂の右奥にある御影堂の向かって右には魚養塚とよばれる小さな塚があり、塚の奥壁に如来像が刻まれている。 十輪院の北西700mの北京終(きょうばて)町に京終地蔵院という小さな寺院がありその入り口の覆堂に鎌倉時代の阿弥陀三尊石仏が祀られている。 |
|