五劫院見返り地蔵

 五劫院は鎌倉時代、重源上人が中国から将来した五劫思惟阿弥陀仏像を本尊とする華厳宗の寺院である。鎌倉時代の重源上人についで江戸時代、東大寺大仏殿を再建した公慶上人の墓が、本堂裏の墓地にある。

 その墓地の入口の小さな覆堂に2体の等身大の地蔵石仏が安置されている。向かって左の像が見返り地蔵である。高さ約2mの船型光背形に造った安山岩に高さ152pの地蔵立像を厚肉彫りしたもので、錫杖を軽く肩に当てて、右足を踏み出して、顔をやや左に見返り、体を斜めに向けて歩く姿を表した地蔵である。衣の裾は後にたなびいている。

 遊行する地蔵が、救済に漏れた衆生を、見身を振り替えして救済する姿を表したものである。像の左側に永正十三(1516)年の刻銘があり、室町中期の作であることがわか