延寿院・円立院・快然の石仏

(近世日向仏師の石仏)

 

串間延寿院の石仏 串間円立院の石仏 平賀快然の石仏

 

 大分県・鹿児島県・宮崎県など九州の寺社の入り口には室町末期・江戸時代の石造の仁王像が多くある。特に国東半島には多数あり、その中でも、旧千灯寺跡や岩戸寺の仁王像は、石の持つ美しさ・厳しさを感じることができる迫力のある石像である(右のサムネイルをクリックしてください)。

 また、文殊仙寺や両子寺等の仁王像は木彫の仁王像と変わらない整った秀作である。しかし、それ以外の国東半島をはじめとした九州各地の石造仁王像は憤怒相の顔や胴体部分の表現が難しいのか稚拙な作が多い。

 私は、石造仁王像は岩戸寺や旧千灯寺跡の像をのぞいて、あまり魅力を感じなかった。 しかし、今年(2011年)の正月に見た、江戸時代に宮崎で活躍した3人の僧、串間延寿院・串間円立院・平賀快然の石造仁王像は違っていた。彼らの彫った仁王像は、デフォルメされた憤怒相の顔が力感あふれ、個性的で印象的な仁王像であった。 

 串間延寿院とその子の串間円立院の仁王像は、両子寺の仁王像のような均整のとれた整った仁王像ではないが、顔の表現が迫力があり個性的で、延寿院・円立院という山伏(修験僧)でもある仏師の人間性を感じる作品で、魅力的である。

禅宗僧で仏師の平賀快然の仁王像も、迫力があり、「松崎観音仁王像」などは石の魅力を生かした作品で、見応えがある。

 これらの仁王像を見に行くきっかけは、偶然、昨年12月に手に入れた『前田博仁著「近世日向の仏師たち」鉱脈社刊』という本である。この本で串間延寿院の仁王像(最勝寺跡)の写真を見て、旧千灯寺跡や岩戸寺の仁王像とはまた違った魅力の仁王像を知った。

 このだび、宮崎市周辺の延寿院・円立院・快然の仁王像・石仏を見てまわり、江戸時代の庶民の信仰に支えられた江戸時代の修験僧や木喰に代表される廻国僧・遊行僧の彫った仏像の魅力を改めて認識することになった。どうぞ、国東の仁王像とは違った魅力のある延寿院・円立院・快然の仁王像や石仏の造形美をお楽しみください。(廻国僧の円空仏や木喰仏やそれらにつながる石仏の魅力について考察した「謎の石仏」のページ参照)  

参照 前田博仁著「近世日向の仏師たち」鉱脈社 2009年12月16日 刊