川内川は大口盆地の北の熊本県境水源としする鹿児島では一番大きな川である。その川内川流域には、仏像を彫った磨崖仏は多くないが、種子(梵字)や石塔・板碑などの種子磨崖仏・磨崖石塔婆・磨崖板碑が多くある。 下流から小路磨崖仏・阿弥陀山磨崖石塔(川内市久住町中鶴)・倉野磨崖仏・七人山伏磨崖碑(宮之城町湯田)・下丁場磨崖石塔とつづく。それぞれ鎌倉末期から南北朝時代に彫られたものである。このページはその内、磨崖仏のある倉野磨崖仏と小路磨崖仏を取り上げた。 |
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倉野磨崖仏 鹿児島県薩摩川内市樋脇町倉野 |
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樋脇町の北端にある倉野は川内川南岸の低い丘陵地帯である。その丘陵の南面の木下瑞光庵跡の崖に大型種子磨崖を4基を中心に、斜面いっぱいに種子板碑・五輪塔・阿弥陀像など磨崖群が彫られている。 大型種子(梵字)磨崖は薬研彫りで右からバン(金剛界大日)・キリーク(阿弥陀)・バク(釈迦)・オーンク(大日)と刻む。このうち月輪の中に彫られているオーンクは金胎両部不二の大日如来を表すめずらしい梵字である。 阿弥陀像と思われる如来座像は1mに満たない小像である。手と鼻の先端が欠けているのが惜しい。 |
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小路磨崖仏 鹿児島県薩摩川内市東郷町三ヶ郷小路 |
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中世の山城、東郷渋谷一族の鶴ヶ丘城跡の岸壁に彫られた磨崖仏である。小像であるが宝冠や衣に赤い着色が残り印象的な磨崖仏である。 宝冠をかぶっている為、一見して胎蔵界大日如来にみえる。しかし、上部に(キリーク)とあるので阿弥陀如来であることがわかる。 この像は紅玻璃式阿弥陀如来座像で、大衆に人気のあった阿弥陀如来を密教の最高仏、大日如来に近づけようと、宝冠をかぶらせた上に仏身全体を玻璃(ガラス) 光沢で赤を塗った阿弥陀如来で、高野山櫻池院の絹本図幅に遺存するのから始まったという。石仏ではわが国唯一のものである。室町時代以降の作か。 |