阿弥陀座像石棺仏 「室町時代」
真禅寺境内の西側の墓地の真ん中に立っている。高さ130cm、幅74cmの家型石棺の蓋に、阿弥陀如来座像を薄肉彫りする。著しく抽象化された表現の阿弥陀石棺仏で「室町時代」の石棺仏の典型である。衣紋は等高線のような平行線の表現で、蓮台も幾何学的な模様である。 本堂前の阿弥陀石棺仏や加西市の春岡寺や玉野の阿弥陀座像石棺仏などの鎌倉期の石棺仏はしっかりとした写実的な表現で、薄肉彫りながらボリュームがあり、整った表現になっている。
これらの石棺仏に比較して室町期のこの石棺仏は、形式化がすすみ、鎌倉期の石仏と較べれば、仏像の表現としては劣っている。しかし、この石棺仏の抽象的・幾何学的表現は、装飾古墳や縄文土器などの原始美術と通じるところがあり、石棺とマッチし、鎌倉期の石棺仏とまた、違った魅力がある。
宮下忠吉氏は「石棺仏」(木耳社刊)の中で播磨石棺仏についての全体像を明らかにし、石仏表現の変遷をを本堂前の阿弥陀石棺仏などの古典(クラシック)表現からこの阿弥陀石棺仏に代表される抽象(シュール)表現の流れで説明された。そして、このこの阿弥陀石棺仏に代表される抽象(シュール)表現の流れの頂点として「北条羅漢石仏」を位置づけられた。(北条五百羅漢参照)
確かに、北条羅漢石仏の方柱形の石材に頭部だけ刻みだした「こけし」のような幾何学的・抽象的な表現とこの石仏は通じるところがあるような気がする。 |