山口県の石仏

 

 
 山口県下において、石仏は江戸時代以降のものが圧倒的に多い。中世をさかのぼるものはわずかである。その中で全国的に知られているのは、『日本発見 石仏紀行』(暁教育図書・昭和55年)の中で美術史家久野健氏によって日本最古の磨崖仏として紹介された山陽小野田市の「菩提寺山磨崖仏」である。
 
 その他、古い石仏としては山口市徳地の「深谷十三仏」がある。「深谷十三仏」は個々の仏をあらわした十三仏としては「応永十四年(1407)」という最古の年記を持つ。下関市豊浦町川棚の「岩屋十三仏」も個々の仏をあらわした十三仏で桃山時代の作である。磨崖仏では他に美祢市の「石屋形羅漢山磨崖仏」が知られていて、室町時代初期の作である。

 江戸時代以降の石仏の中で珍しいものとしては、山口市の陶ヶ岳の寝釈迦像の磨崖仏がある。十六羅漢とともに山頂近くのそそり立つ絶壁に薄肉彫りされている。この陶ヶ岳はかっての霊場で、陶ヶ岳の山頂近くの広場には鳥居や石段、石碑、観音磨崖仏が残る。山口県にはこのような信仰の山が多くある。これらの山には簡単に霊場の巡礼ができるように、江戸後期から昭和にかけて西国三十三ヶ所観音霊場や四国八十八ヵ所霊場の各寺院の本尊を模した石仏が分霊場としてつくられた。

 周南市の湯野観音岳や山口市徳地の狗留孫山などがそれである。金の観音像が出土した湯野観音岳には四国八十八ヵ所の分霊場が、徳地狗留孫山には西国三十三ヶ所の分霊場があり、現在も信仰をあつめている。

 「山口県の石仏1」のページでは、菩提寺山磨崖仏をはじめとした桃山時代までの古い石仏を、「山口県の石仏2」では、陶ヶ岳の磨崖仏・湯野観音岳四国八十八ヵ所など、江戸時代から昭和期の石仏を紹介しています。どうぞご覧ください。

 

INDEX

山口県の石仏1 山口県の石仏2

 

参照文献
中西輝真   「防長の石仏」 ( 『日本の石仏 山陰・山陽篇』) 図書刊行会
内田伸  「山口県の石造美術」 マツノ書店