豊能町朝川寺十五羅漢

 豊能町木代の朝川寺は室町時代に創建された、曹洞宗の寺院である。その朝川寺に平成12年、十五羅漢石仏がつくられた。

 羅漢は悟りを開いた仏弟子を意味し、石仏としては十六羅漢や五百羅漢が知られている。十六羅漢は仏の命を受けて、長くこの世にとどまって、仏法を守護するという十六人の尊者をさす。禅宗の寺院を中心に、十六羅漢石仏や五百羅漢石仏が近世になり各地に作られた。これらは類型的な僧や老人像の集まりといった感じで、私はあまり好きではない。しかし、朝川寺の十五羅漢は魅力的である。

  十五羅漢は、教義を無視し、すべて比丘形で法界定印の印を結び、座禅を組む。大きな座布団のようなものに座る比丘形の一体は羅漢ではなく文殊菩薩である。(座布団のようなものをよく見ると獅子であることがわかる。)比丘形で表現されているが人間くささが感じられず、羅漢が石そのものであるかのような印象を受ける。石や岩そのももの魅力や生命を生かした作品である。
 朝川寺の十五羅漢石仏と僧形文殊菩薩石仏は、本堂と禅堂をつなぐ渡り廊下をくぐった、本堂横の新しく作られた庭に安置されていて「座禅の庭」と名付けられている。静かに、羅漢を見つめれば、俗世間を忘れ落ち着いた気持ちになる。

 これらの石仏の作者は石彫家の今井廉氏で、奈良県橿原市の光岩院の「法然石」や日本招き猫倶楽部美術館 の「仁王招き猫」など、石の生命や温かさを生かしたユニークな作品を制作されている。  

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