大和の地蔵石仏(3)  天理市・生駒市・平群町

 天理市柳本付近には長岳寺を中心として鎌倉時代から南北朝時代にかけての石仏が多くある。地蔵石仏も多い。長岳寺地蔵笠塔婆は高さ153pの柱状で上面に像高45pの地蔵を半肉彫りしたもので、元享2(1322)年の刻銘を持つ。特色あるの石仏としては角張った頭部で目が細く、低い鼻でおちょぼ口の個性的な表情の南北朝時代の石仏がある。柳本墓地の永徳3(1383)の地蔵石仏がそれである。長岳寺の北東に弥勒石龕仏と同じ僧善教の作と考えられる。長岳寺奥の院への山道の地蔵石仏など柳本付近には同じ作風の石仏が何体か見られる。

 不動三尊磨崖仏がある天理市の桃尾の滝から竜福寺跡(大親寺)に続く山道の参道脇には不動磨崖仏や板碑などと共に地蔵磨崖仏も見られる。また、参道から脇道には行ったところの滝本墓地の高さ3mほどの岩肌に江戸時代初期の作と思われる地蔵磨崖仏がある。

 生駒市小明町の県道沿いの東側の小高いところに夫婦地蔵と呼ばれる阿弥陀と地蔵の二尊石龕仏がある。地蔵石仏は鎌倉後期の作風である。生駒市上町の福満寺には整った像容の優れた地蔵石仏があり、永年2(1298)の刻銘を持つ。

 平群町の鳴川にある清滝八尺地蔵磨崖仏は薄肉彫りの地蔵磨崖仏の傑作で鎌倉中期の作風である。近くの辻堂にはゆるぎ地蔵と呼ばれる弘安4(1281)年の刻銘の持つた、総高185pの笠をのせた地蔵石仏がある。