田の神さあ 薩摩(9) 鹿児島市

  鹿児島市東佐多町の東下の田の神は、像高90pほどの丸彫り像で、たれ目、笑い顔の福々しい面貌で、田の神舞を舞う神職の姿を表した。触田の田の神と同じ作者のものと思われる。顔は白く彩色している。

 鹿児島市花尾町の茄子田の田の神はメシゲとスリコギを持った田の神である。鼻の一部や中を中空に彫った口の一部が欠けているため、一見不気味に見えるが、よく見ると川上の田の神のように微笑んでいる。ともに、県指定有形民俗文化財である。  鹿児島市松元町の入佐新村の田の神は山の中の大きな岩の前に安置されている。僧型立像で笠のようなシキをかぶり、右手にメシゲ、左手にスリコギらしきものを持つ「県の民俗資料文化財)「享保12(1727)年」。松元町直木の山陰の田の神は全面を削った自然石に、深く彫り窪みをつくり、薄肉彫りで、シキをかぶり、メシゲと大きな椀を持った百姓風の田の神像を表したもので、個性豊かな造形の田の神である。寛政4(1792)の紀年銘を持つ。

 川上町の川上小学校近くにある川上の田の神は、大きなシキを笠の用にかぶり、右手にメシゲ、左手にスリコギを持って、田の神舞を踊る姿を表した田の神で、慎ましげに微笑む表情が魅力的である。 

 鹿児島市小野町の中福良の田の神は右手にメシゲを持つた立像で幸架木川沿いの三角地に祀られている。木之下の田の神は笠状のシキをかぶり、右手にメシゲ・左手に椀を持った田の神で狩衣風の上衣をきた神職型の田の神で、石工の腕のさえが感じられる秀作である。新村の田の神は自然石の前面を平らにし、彫り窪みを作り、浮き彫りで表した田の神像である。シキの笠を大きくかぶり、メシゲと椀を持つ。安永8(1778)年の紀年銘を持つ。梅ヶ渕観音の参道脇の民家の庭に田の神が祀られている(梅ヶ渕の田の神)。

 薩摩半島には全体的に円筒形につくられた特異な姿の頭巾風のシキをかぶった僧型立像の田の神像がみられる。享保年間につくられたものが多く、鹿児島市内では永田の田の神「享保6(1721)年」、山田の田の神(県の民俗資料文化財)「享保8(1723)年」、滝の下の田の神などあげられる。 中山町の田の神はメシゲと椀を持つた田の神で、コンビニの駐車場脇に祀られている。