田の神さあ(3) 薩摩川内市(入来町・祁答院町・樋脇町) |
山口の田の神と市野々の3体の田の神は鹿子田の田の神などと同じように右手にメシゲ、左手に閉じた扇子を持つ農民型の田の神を浮き彫りする田の神像である。山口の田の神 は被っているシキがおかっぱ頭のようになっていて、かわいい女の子に見える。市野々の田の神は他の2体と100mほど東に離れた民家の石垣にある田の神像(市野々の田の神1)と、県道沿いにある2体の田の神のうち左側の田の神が(市野々の田の神3)が古く、共に文化五年(1808)の紀年銘を持つ。市野々の田の神3は摩滅がひどく、顔の表情はわかりにくい。右側の田の神(市野々の田の神2)は大正八年(1919)に新しく作られたもので、団子鼻で土偶のようなプリミティブな表現の田の神である。市野々の田の神1に表現が欲にている。 藺牟田池口にある麓東の田の神は小さな田の神像で藺牟田構造改善記念碑の礎石の上に石に挟まれるように置かれている。飯椀を抱えるように持ち、メシゲをかかげている。 薩摩川内市樋脇町塔之原の本庵の田の神は鎧甲を着けた武人の田の神である。持ち物は破損していてわからないが、左手に杖状のもの(鉾?)を持ち右手に宝棒のような物をもつ。右手の持ち物は見ようによればメシゲにも見え、メシゲとすればはじめから田の神として作られたものといえるが、おそらくもとは持国天などの天部像であったのではないだろうか。 |