薩摩の田の神さあ(2) 薩摩川内市入来町

 薩摩川内市入来町副田の下手の田の神は立像丸彫りの女人像の田の神で、元禄袖の長衣を着流し、頭巾風に垂らしてシキをかぶっている。右手で手鏡のようにメシゲを持ち、左の袖から可愛い手が少し見える。たおやかな若い女性を表した女人像の田の神の秀作である。中組の田の神は紀年銘のある田の神像では3番目に古く、宝永八年(1711)に作られたものである。頭巾を肩から背中を覆うように被り、長衣長袴をつけた背を曲げた地蔵型の田の神である。(県指定有形民俗文化財)

  薩摩川内市入来町には自然石に舟形や四角形の彫りくぼみを作り、右手にメシゲ、左手に閉じた扇子を持つ農民型の田の神を浮き彫りする田の神像が多くある(鹿子田の田の神中須の田の神)。鹿子田の田の神は、それらの田の神像の中でも最も古く明和8(1771)年の紀年銘を持つ。帽子風のシキをかぶり、袖のない仕事着に、裁着け袴をはく素朴な趣の田の神である。中須の田の神は鹿子田の田の神と類似していて、明治2(1869)年の紀年銘がある。

 堂園田の神栗下の田の神も鹿子田の田の神などと同じように右手にメシゲ、左手に閉じた扇子を持つ農民型の田の神を浮き彫りする田の神像である。堂園の田の神、は陣笠のようなシキをかぶった細長い顔の田の神像である。栗下の田の神はおじさん風に軽妙に化粧(彩色)された田の神で、化粧した人のセンスが光る像である。 

 松下田の田の神は元文2年(1737)の作で、裁着け袴をはき右手で軍配のようなメシゲをかかげている。シキの前の部分か欠けていて日差しがまぶしそうである。