田の神さあ 大隅(9) 鹿屋市

 鹿屋市の特色ある田の神像のもう1つは、メシゲと振り鈴を持ち、上衣の衿から胸にかけて可憐な飾りがついている田の神舞を踊る田の神像である。野里の田の神「寛永4年(1751)」県指定有形民俗文化財に代表される。近くにある芝原の田の神1も同様である。ともに、桃色の凝灰岩でつくられていて、八角柱台石の上に立つ。

 岡泉の田の神は肝付町(旧高山町)などによく見られる大きな袖のついた長衣を着て、ワラヅトを背負い鍬を持つすらりとした姿の田の神である。顔面は摩滅しているが、田んぼの中に祀られていて風情がある。永野田のデンプン工場の裏手に祀られている永野田の田の神も大きな袖のついた長衣を着た女性的な表情の田の神であるが他の田の神と違って左手で稲穂を担ぐように持つのが特徴である。

 南町の牟田原の田の神獅子目集落の入口にある田の神芝原の田の神2、川東町簡易郵便局の近くにある川東町の田の神は頭陀袋をさげスリコギ、メシゲを持つ旅僧型の田の神である。牟田原の田の神は嘉永2年(1849)の刻銘を持つ。芝原の田の神2は岩弘中の田の神・宮下下の田の神などとよく似た表現の田の神である。川東町の田の神は昭和31年につくられた旅僧型の田の神であるが、顔の表情やかがみ込んだ姿勢は独特のものがあり、作者の個性が出た現代の田の神像の秀作である。