田の神さあ 大隅(8)  肝付町・鹿屋市(吾平町・串良町)

 塚崎の田の神中福良の田の神はシキを肩に垂らしてかぶり、大きな袖のついた長衣を着たすらりとした女性的な表情の田の神である。塚崎の田の神はヒョウタンをさげメシゲと宝珠を持ち俵の上に乗り、端正な顔である。中福良の田の神はワラヅトを背負い鍬を持つ像で、塚崎の田の神とともに県指定有形民俗文化財である。

 車田の田の神は、メシゲとスリコギを持つ像で、渦巻き模様のシキをアミダにかぶっていてるため、シキが光背のように見える。像の傍らに山水と磨崖仏風の小さな浮き彫り像を刻み添えている。また、頭の上と胸元にも小さな仏像が付けてある。車田の田の神の神と同じ作者と思われる田の神が苫野にある。2体(苫野の田の神)並んだ向かって左の田の神で、この田の神像もメシゲとスリコギを持ち、頭の上と胸元に小さな仏像がある。苫野の左の像は鹿屋地区でよく見られるスリコギ、メシゲを持つの旅僧型の田の神である。

 大牟礼の田の神真角の田の神はともに市の指定有形民俗文化財で頭陀袋をさげスリコギ、メシゲを持つ旅僧型の田の神の秀作である。顔はともに童顔風であるが、大牟礼の田の神は厳しい表情、真角の田の神は温和な表情である。岡崎上の田の神宮下下の田の神下小原の田の神もスリコギ、メシゲ持ちの旅僧型の田の神である。岡崎上の田の神は文化2(1805)の刻銘を持つ。

 鹿島市串良町の串良川流域にはメシゲとスリコギを持ち膝を立てた趺座の形で組む神職型座像の田の神が多く見られる。これらの像は口や顔をゆがめた個性的な顔をした田の神像である。映画「望郷」(1993年・斎藤耕一監督)のロケ地となった串良川沿いの土手にある堂園の田の神中郷の田の神などがそれである。堂園の田の神は右足を立て、左手でスリコキを持ち、中郷の田の神は左足を立て、右手でスリコギを持つ。

 北原の田の神は串良川沿いの林の中に、風化が進み蔓草と苔に覆われた無残な姿で残っている。山下の田の神は小さなメシゲを持った素朴な姿の田の神である。