田の神さあ 大隅(6) 曽於市

 曽於市(旧財部町・末吉町・大隅町)の田の神像の多くはシキを被りメシゲを持ち、裁着け袴をはいた農民風の田の神である。大川原の田の神も農民風の田の神で右手にメシゲをかかげ、左手に飯椀を持って、立っている。着衣は青と黒で彩色されている。 「安永9年(1780)年」の刻銘がある。富田の田の神も同じくメシゲをかかげ、椀を持った田の神で、福耳を持ったにこやかな丸顔である。大きく膨らんだお腹と裁着け袴が印象的である。檍(あおき)の田の神は素朴な農民風の田の神で、右手でメシゲを左手で椀を持って田んぼの畦に立っている。池山の田の神も同じく農民風の田の神で左手には椀でなくスリコギをかかげ持つ。

 刈原田の田の神は長袴を着て、両手でメシゲを持って田の神舞を踊る姿の田の神像で、口をひん曲げゆがめた顔に特徴がある。この田の神像の前には前にはミニサイズの田の神像が置かれている。志布志市を中心として鹿屋市串良・肝付町の旧内之浦町にかけて特色ある田の神としてすりこ木とメシゲを持った座像または片膝を立てた半跏像の田の神像(神職型座像※)があげられる。県の有形民俗文化財に指定されている志布志市有明町野井倉の田の神などがそれである。曽於市では曽於市大隅町の広津田の田の神が神職型座像の田の神としては最もよく知られている。高さ140pの大型の田の神で、単純明快な簡略な表現に特徴がある。

 曽於市末吉町南乃郷仮屋の田んぼの中の小山の上に3体の田の神が祀られている。3体の田の神のうちの2体が神職型座像の田の神である。西を向いたやや小型の田の神(仮屋の田の神1)は片膝を立てた像でメシゲとスリコギを持った田の神で、鹿屋市串良町細山田の堂園の田の神に似た表現の田の神像で、赤い彩色が残る。東を向いた大型の田の神(仮屋の田の神2)は座像でヘルメットのようなシキを被った田の神像で、志布志市有明町伊崎田鍋の田の神とよく似た表現の田の神である。新田の田の神は座像であるが左手はスリコギではなく椀を持つ田の神で、昭和になって造立されたものである。檍の田の神の近くの檍神社には安産子育て地蔵があり、豊かな胸から水があふれるようになっていて、安産に聞くといわれている。この子育て地蔵の姿は通常の地蔵の姿ではなくシキを被った田の神風の姿になっている。