近江の磨崖仏3

富川磨崖仏

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阿弥陀座像 阿弥陀三尊 阿弥陀座像
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観音菩薩 勢至・観音菩薩 不動磨崖仏
・滋賀県大津市大石富川町         
・バス JR東海道線「いしやま」駅より大石・外畑方面行きバスに乗り「鹿跳橋」下車。東に信楽川に沿って4q。
・自動車 京滋バイパス「南郷IC」より県道大津南郷宇治線を経て鹿跳橋へ、鹿跳橋より国道422号線を信楽方面へ約4q。
 信楽川沿いの山腹の40mを越える大岩壁に刻まれた阿弥陀三尊磨崖仏である。像高6.3m
で線刻彫りの大野寺や笠置寺の磨崖仏を除くと近畿では最大の磨崖仏である。

 一見線彫りのように見えるが、中尊の阿弥陀如来は、像の周りをやや深く彫り沈め、板彫風に線や面を薄肉彫りした陽刻である。そのために、口や目などの表現が不自然になっている。観音と勢至の脇持は普通の手法の薄肉彫りである。

 九州の磨崖仏のほとんどは厚肉彫りか半肉彫り・薄肉彫りで、線刻の像は少ない。中には臼杵磨崖仏や菅尾・元町磨崖仏のように丸彫りに近い磨崖仏もある。それに対して、近畿の磨崖仏は線刻彫りや薄肉彫りの像が多い。それは、技術の違いというよりは素材の違いである。つまり、近畿地方の岩のほとんどが硬質の花崗岩であるのに対して、九州は加工しやすい柔らかい凝灰岩であることが、この違いを作り出したといえる。

 特に、この富川磨崖仏のような大規模な磨崖仏となると、花崗岩の岩に半肉彫りをすることは非常に困難なことと思われる。そのため、笠置寺虚空蔵磨崖仏(像高約9m)や大野寺弥勒磨崖仏(像高約11.5m)は線刻彫りである。笠置寺虚空蔵磨崖仏や大野寺弥勒磨崖仏は近畿を代表する磨崖仏として知られているが、私はあまり魅力を感じられない。確かに、線は美しく優美であるが、表現は絵画的で岩の雄大さ、力強さを生かしていないように思える。

 富川磨崖仏は、笠置寺虚空蔵磨崖仏や大野寺弥勒磨崖仏のような優美な表現でないが、薄肉彫りや陽刻の線彫りといった方法で、岩の厳しさに正面から取り組んでいて、大岩壁をうまく生かした力強い表現で、忘れがたい磨崖仏である。

 富川磨崖仏は、右耳の脇から山水がしみ出るので、「耳だれ不動」とよばれ、耳病の人の信仰を集めている。阿弥陀如来の向かって左側には線刻の絵画的な表現の不動磨崖仏がある。
この不動磨崖仏も阿弥陀三尊磨崖仏と同じく鎌倉時代の作である。

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多羅尾磨崖仏

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多羅尾磨崖仏 阿弥陀座像
・滋賀県甲賀市信楽町多羅尾
・鉄道 信楽高原鉄道「しがらき」より多羅尾行きバス乗車。
・自動車 名神「栗東IC」より県道栗東・信楽線と大津・信楽線で(「瀬田東IC」・「瀬田東IC」より大津・信楽線でor名阪国道「上柘植IC」より県道草津・伊賀線と国道307線で)信楽へ、信楽の中心部より県道信楽・上野線を南へ約8q。

 陶器の町として知られた信楽町の南部、三重県上野市や京都府南山城村にはさまれた県境の山里が多羅尾である。この多羅尾から御斉(おとぎ)峠を越えて上野市へ抜ける街道沿いには磨崖仏が点在している。その中でも、最も古く、多くの石仏が刻まれているのが、多羅尾の集落の東のはずれにあるこの多羅尾磨崖仏である。

 大戸川沿いの細長い花崗岩の巨岩に、像高約60pの阿弥陀座像を中心に不動明王など多くの石仏を刻まれている。阿弥陀座像の光背面に鎌倉後期の正中二(1325)年の造立銘がある。他の地方の鎌倉石仏のような写実的な表現ではないが、素朴で暖かみのある磨崖仏である。


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妙感寺地蔵磨崖仏

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・滋賀県湖南市三雲妙感寺
・JR JR草津線「みくも」駅下車。南西へ徒歩2.5q。
・自動車 名神「栗東IC」より国道1号線を東へ。甲西町三雲付近で県道草津・伊賀線に入り、 1qほど進むと、妙感寺の石標があり、そこで右折し、川づたいの道を約1.5q。 

 妙感寺は臨済宗妙心寺派の禅寺で建武の中興で活躍した万里小路藤房(妙心寺二世授翁宗弼和上)が開基し晩年を過ごした寺という。この、妙感寺の裏山に「山の地蔵磨崖仏」とよばれるこの地蔵磨崖仏がある。

 大きな花崗岩の岩壁に、舟形光背を彫りくぼめ、約170pの地蔵菩薩立像を半肉彫りする。錫杖は妙光山地蔵磨崖仏のような短い柄ではなく通常の長さである。地蔵の左右に像高約40pの二童子が脇侍として彫られている。鎌倉後期のすぐれた地蔵石仏である。


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車谷と岩根山の不動磨崖仏

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車谷不動磨崖仏 車谷不動磨崖仏 車谷不動磨崖仏 車谷不動磨崖仏 岩根山不動磨崖仏
・滋賀県湖南市花園 ・滋賀県湖南市岩根
・JR ・JR草津線「こうせい」駅下車。北東へ徒歩2.5qで花園。花園より谷沿いの山道を約1qで車谷不動磨崖仏。
・JR草津線「みくも」駅下車。JRバス近江八幡行で「近江大口」下車徒歩10分で岩根(花園より岩根まて゜約2q)。岩根より善水寺への自動車道を0.5qで岩根山不動磨崖仏。
・自動車 ・名神「栗東IC」より国道1号線を東へ。湖南市美松を左折。県道野洲甲西線に入り東へ約1qで花園。岩根小学校付近で車を置き、谷沿いの山道徒歩1qで車谷不動磨崖仏。
・名神「栗東IC」より国道1号線を東へ。朝国交差点より県道彦根八日市甲西線に入り、岩根東口を左折、岩根橋西詰を右折、甲西農協岩根支所前より善水寺への自動車道を0.5qで岩根山不動磨崖仏。(花園より約2qで甲西農協岩根支所前。) 

 岩根山の中腹にある。善水寺は和銅年間(708年〜715年)に草創され、最澄(伝教大師)によって中興された、国宝の本堂をはじめ多くの文化財をもつ、古刹である。その善水寺の周辺には近江を代表する不動磨崖仏が2つある。

 一つは、善水寺の近くにある不動寺の岩根山不動磨崖仏である。不動寺は無住の寺で、不動磨崖仏を拝礼する拝殿があるのみである。花崗岩の巨岩に高さ約1.6mの不動磨崖仏を半肉彫りする。顔は磨滅しているが、南北朝時代の不動磨崖仏の秀作である。(建武元(1334)年の紀年銘)拝殿があるため、正面からの写真は撮れず、拝殿の下から見上げる写真となった。

 岩根山の北西の車谷と呼ばれる谷には像高4mの巨大な不動磨崖仏がある。高さ6mあまりもある花崗岩の巨岩に、不動磨崖仏立像を半肉彫りしたもので、江戸時代の作である。顔をはじめ衣紋の表現など形式的で写実性に欠けるが、近江では富川磨崖仏につぐ大作で、蔵王権現のように、左足膝を左に張って、右足を大きく踏み込みこんだ姿が動きがあっておもしろい。
周囲の自然ととけ合った姿は魅力的で絶好の被写体となっている。



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balla11.gif (642 バイト)近江の磨崖仏2

 



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