全国の十三仏

 大和の十三仏板碑で最も大型で優れたものとして天理市苣原町の大念寺十三仏板碑が知られている。室町時代後期の天文24(1555)年の紀年銘を持つ。天文年間は生駒谷・平群谷の十三仏碑が多数造られた時期であること、大念寺と同じ融通念仏宗の寺院は十三仏板碑のある石福寺・興融寺をはじめとして生駒谷・平群谷には多いことなど生駒谷・平群谷の十三仏碑との共通点が見られる。柏原市の高井田十三仏板碑のある高井寺も融通念仏宗である。

 十三仏信仰に関わる最も古い石造物としては十二尊の像を刻んだ岡山県高梁市有漢町の保月六面石憧があげられる。伊行恒の作で「初七日より十三年の忌日に相当する諸尊十二仏を彫り、大菩提心を証ずる為に造立した」との刻銘がる。容像を刻んだ石造十三仏として、山口市徳地深谷の深谷十三仏が最も古く応永14(1407)年の刻銘を持つ。深谷十三仏は一石一尊仏の十三仏である。同じ山口県の下関市の川棚温泉近くにある岩谷十三仏も一石一尊仏の十三仏である。室町後期の作で、大小の岩が組み合わされた庭園風の公園の、岩の上に並べられている。

 福島県の天栄村の羽黒山磨崖十三仏は小さな墓地の上段の岩に、細長い龕を設けて、並立に十三仏を厚肉彫りしたもので、江戸時代の元禄11年の刻銘がある小像ながら迫力のある磨崖仏である。信貴山成福院十三仏石室と同じような十三仏石室は福井県坂井市三国町にもある。瀧谷寺石龕開山堂で石室の内壁に十三仏を半肉彫りする。笏谷石に彫られた精緻な彫りの十三仏である。

 長野県諏訪郡原村の深叢寺には江戸時代の名石工、守屋貞治が彫った深叢寺十三塔がある。基壇に十二仏を浮き彫りし、その上に主尊として地蔵菩薩半跏像の丸彫り載せた珍しい十三仏である。磨崖西国三十三所観音のある広島県竹原市の黒滝山には昭和5年の作の黒滝山十三仏がある。自然石にふっくらとした願容のかわいらしい十三の仏が彫られている。三重県伊賀市には地蔵菩薩磨崖仏の横に彫られた室町時代後期の十三仏の磨崖仏、守田十三仏石仏がある。十三仏は矩形の彫りくぼみをつくり、その中に大念寺や生駒・平群谷の十三仏板碑のように天蓋の下の虚空蔵菩薩とその下に三列四段で12尊を半肉彫りしたものである。